製本例

『北海道主要樹木図譜』の頒布購入者側は郵送されてきた合計28枚にものぼる大型封筒にそのまま入れて保管する人もいましたが、最終輯の封筒に同封されたチラシ「製本のすすめ」を見て、合本製本を依頼する人もいました。

ただ製本組も一様ではなく、チラシ記載内容どおり発行元である三秀舎に製本を委託する人がいる一方で、個々に三秀舎以外の製本業者や職人へ依頼したケースも見受けられます。

その多くは1冊にまとめる合本製本をしていますが、「第1巻」「第2巻」「第3巻」と3冊に分けているケース、和綴じしたものなど、いろいろな形態が確認されています。

さらには、製本構成においても、解説文をすべて製本前半にまとめ絵柄のある図版を後半に連続させたものや、1樹種につき図版と解説を一組にして交互に並べたものなど、依頼者の個性が反映されたさまざまなバリエーションが存在します。

「再版製本」にも触れておきたいと思います。

別項で述べたように刷りためていた第1巻分の石版画(第1図から第31図)を大正12年9月の関東大震災によってすべて失ってしまった三秀舎ですが、ようやく震災2年後に第32図から石版刷りを再開し、その7年後第86図をもって完結させています。

しかしその後も図譜の増刷をのぞむ声があり、全図を揃える必要に迫られました。

そこで昭和6年3月最終輯を送付した後、第1巻分の図版を石版画ではなく三色刷りという複写にも似た大量印刷の手法で再度印刷しなおすことにしたのです。

これにそれまで刷りためていた第2巻・第3巻分の石版画(第32図~第86図)を加え、合本製本したものが複数確認されています。

つまり前半1/3は「再版」の図版を使用し、後半2/3を石版画で構成した合本製本で、大学図書館の蔵書などでは比較的多く見かけるタイプとなっています。