『日本森林樹木図譜』は『北海道主要樹木図譜』発行より遡ること20年の明治33年(1900年)に農商務省山林局が発行、林学博士白沢保美が編んだ樹木図鑑で、『北海道主要樹木図譜』制作にあたってはこれを大いに参考にしたと推測されます。
画工は丸山宣光、大石栄雄。
第一帙は明治33年(1900年)印刷、多色刷り石版画88図、第二帙は明治41年(1908年)印刷、同様に74図、合計162図で構成されています。
石版画プレートは縦455×横340mm(東京中央図書館所蔵品)と『北海道主要樹木図譜』よりもひと回り大きなサイズを採用しています。
ただしプレートには『北海道主要樹木図譜』の図版に付記されたような画工名や印刷工の名前は見当たりません。
特徴的な点は樹皮や木肌の写生画や木材の断面図などが添えられていることで、樹種の判別がつきにくい場合にかなり有効だったのでは、と考えられます。
ちなみにネット上では「国立国会図書館デジタルコレクション」で全図版がモノクロ図に変換され、「台湾林業試験所」のサイトでは全図版がカラーで紹介されています。
ただ、当サイトで調べた限り解説ページは目にしたことがないことから、当初は図版のみで構成された図鑑なのかも知れません。
『日本森林樹木図譜』は大判の図版を揃えた高価な出版物でしたが、それをB5判程度に縮小したハンディ版ともいえる『複製日本森林樹木図譜』が明治44年(1911年)に「上巻」、大正元年(1912年)に「下巻」が発行されています。
162図のほとんどはモノクロの線画となっており、彩色されたものはわずか7版のみの簡素なものですが、装丁は群青色の布地を使用して針葉樹のシルエットを浮かび上がらせたもので、非常に格調がある仕上がりとなっています。
さらに昭和58年(1983年)にはB4判オールカラーの『原色精密日本森林樹木図譜』が講談社から発行されています。
樹木323種に加え「日本竹類図譜付き」はさらに竹56種が追加された二重箱入りの豪華出版物となっています。