2011年9月30日から10日間、札幌駅北口徒歩5分にある貸画廊「ギャラリー・エッセ」において、おそらくは日本ではじめての『北海道主要樹木図譜』の展示会を無料開催し、道内外からのべ870人にご来場いただきました。
会場スペース(71㎡)の関係上、石版画全86枚すべてを観ていただくことはできませんでしたが、36枚を額装して展示、ほかに大判の石版画「北海道重要樹木図」や製本されたものを数種、当時実際に郵送に使用された封筒、年表などの資料もならべ、なるべく平面的な印象にならないよう会場を構成しました。
ただ、樹木図鑑の展示会とはいえむずかしい学術的な側面は表にださず、一般のかたにも気軽にしたしんでいただくことを主眼に「アートの展覧会」という雰囲気にしたてました。
反対にタイトルは「北海道主要樹木図譜元版展示会」というかたくるしいものとなりました。
わざわざ「元版」と銘打った理由は、いくつかの製本例のなかには全体の1/3にあたる第1図から第31図までが石版画ではなく、三色分解の原色版を使用しているものが多く確認されているからです。
そこで当展示会ではすべてオリジナルの石版画のみ展示していることを明示するため、「元版」の文字を付加いたしました。
この展示会は2009年北海道大学横の古書店で製本もされていない封筒入りの『北海道主要樹木図譜』一式が売られているのを目にし、逡巡したあげく購入した日からスタートしました。
仔細にみると、きわめて精細な写生画が石版画によってうつしく再現されており、これほどの文化的価値をもつ著作物が北海道に存在していたかと思うとやや高揚したことを覚えています。
以来、人と会うたびに話題にしたのですが、残念ながらこの樹木図鑑の存在を知っている人に札幌で出会うことはありませんでした。
そうこうするうちに、北海道の知的遺産ともいうべき大正時代の樹木図鑑をこのまま埋没させておくのはもったいない、札幌で展示会を開き、多くの人に知ってもらいたいという気持ちがふくれあがり、この展示会開催へとつながったわけです。
展示会を開催したことで、予想外だったのは、得るものがたくさんあったことです。
来場された専門家の方や実際に製本を所有されている方の、いまだ知りえなかったお話しも聞くことが出来ました。
北海道の地元月刊誌「カイ」には、口絵に図版を紹介していただくことにもなりました。
また「北海道で開催してくれて感謝している」「東京の人にも見せてあげてほしい」という激励や助言もたくさんいただきました。