製本された『北海道主要樹木図譜』は道内のいくつかの自治体図書館、国会図書館、国立科学博物館、宮城県図書館、岡山県立図書館、台湾林業試験所などのほかに、ケンブリッジ大学、トロント大学、北海道大学、北海道教育大学、北海学園大学、弘前大学、岩手大学、東京大学、東京農工大学、帝京大学、金沢大学、京都大学、広島大学、鳥取大学、愛媛大学、九州大学、大分大学などの各大学の付属図書館に所蔵されています。
しかし、たとえば188万冊の蔵書を誇る東京都立中央図書館(有栖川)には北大出版会発行『普及版 北海道主要樹木図譜』はあるものの、1921年から発行されたオリジナル版は見当たらず、やはり希少な存在になっていることがうかがえます。
当サイトではわずかながら道内で閲覧できる場所と製本例をいくつかご紹介します。
まずは、北海道立図書館北方資料室(江別市)。
ここは何冊かの製本版のほかに、いまだ製本されていない封筒に入れられたままのものなど、北海道大学付属図書館同様、比較的多くの『北海道主要樹木図譜』を所蔵している図書館といえるでしょう。
製本のひとつはすべて元版を使用し、めずらしく表紙はブラウン色で、「道庁立図書館」という丸型ブルーインクの押印や「北海道庁立図書館行啓記念」というエンボスが刻まれています。
製本方法もふつうのものとは異なり、旗竿状の紙に元版や解説紙を糊付けして合本しており、安易にオリジナルの石版画を裁ち落としてしまうことを避けた工夫のあとが見られます。
ほかに「再版製本」もありましたが、こちらは表紙・裏表紙ともブルークロス地ではなくグリーンの紙を貼ったもので、比較的よく目にするタイプです。
ここは閉架なので、閲覧には申請が必要です。
北海道大学付属図書館(札幌市北区)。
『北海道主要樹木図譜』は北大の地で生まれたという背景もあって、整理されているか否かは別として、ほかの図書館に比べて史料や蔵書に恵まれているのは当然といえるかもしれません。
所蔵されている場所も正門近くの本館図書館だけでなく、キャンパス内の農学部図書館や北方生物圏センターにも置かれているようです。
本館図書館で閲覧させていただいたのは3巻セット3種でした。
そのうちのひとつは個人が製本したと思われる素朴なもので、背表紙には手書き文字でタイトルが書きこまれており、さらに郵送されてきた封筒も合せて綴じられているほほえましいものでした。
もうひとつの3巻セットは第1巻のみ再版を使用しているものでしたが、ブルークロス地の表紙には「第1巻 (再版) 自第1図・至第31図 VOLUME 1. SECOND EDITION Plates 1-31.」と明確に印字されたものでした。
また「農学部植物学教室蔵」という朱印に加え、「宮部蔵書 Library of K.Miyabe」というブルーインクのスタンプも押されておりました。
札幌市立中央図書館(札幌市中央区)。
最初の例は図版が第1巻分(第1図~第28図)しかなく、厚さのない薄い製本ですが、すべて元版で構成されています。
表紙・裏表紙はブルークロス地貼り。
興味深いのは何箇所かに「南満州鉄道株式会社図書印」が押印されていることです。
さらには「Southern Manchuria Railway Library DAIREN」と組まれた凹凸のエンボス押印も見つかりました。
次の例は第1巻分(第1図~第28図)がすべて再版、残りの第2巻・第3巻分は元版を使用した、典型的な「再版製本」例です。
背表紙にはブルークロス地を貼り、表紙はグリーンの紙を貼ったもので、背表紙には「北海道主要樹木図譜 北海道」と金箔文字が読めますが、もしかしたら最後の単語は「北海道庁」となっているかも知れません(ちょうどラベルが貼られているため確認できません)。
また、製本されず、封筒に入った状態のままで保管されているものもありましたが、経年変化による傷みも見えました。
閉架書籍なので、受付で閲覧を申請します。
市立函館図書館(函館市五稜郭町)。
3巻一式を所蔵していて、第1巻の図版は再版でしたが、3巻ともブルークロス地の表紙で比較的保存状態もよく綺麗な印象があるだけでなく、ページ切り落とし部分3面も金の塗色が施されていて、高級感を感じさせます。
第3巻のみ奥付けに「昭和6年3月23日印刷 3月25日発行 定価金六拾円 印刷所&発行所三秀舎 売捌所丸善株式会社 東京市日本橋通二丁目」と印刷されていました。
なお、奥付けの対抗ページには「都市計画課」の印が無造作に押されていたので係の人に尋ねたところ、「函館市都市計画課から寄贈された」との話でした。
この図書館だけはめずらしく開架扱いとなっており、入館者は気軽に書棚に置いてある製本を手にとることが可能となっています。